肥満症や高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、実はそれぞれが独立した別の病気ではなく、「肥満」、特に内臓脂肪型肥満を原因としていることがわかってきたんです。
そして、肥満・高血圧・高脂血症・耐糖能障害(糖尿病)が、動脈硬化と密接な関係があることもわかってきました。
動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった重大な病気を引き起こす起因となることがわかっています。
つまり、肥満・高血圧・高脂血症・耐糖能障害(糖尿病)は、将来的には心筋梗塞や脳梗塞を誘発しやすい原因であるために「死の四重奏:Deadly Quartets」と呼ばれているのです。
内臓脂肪型肥満の人で、「高血圧」、「高血糖」、「高BMI」、「高トリグリセリド血症」、そして「高コレステロール血症」のいずれかのうち、2つの症状を持っている人はまったくない人と比べると、心臓病の発症リスクがほぼ10倍であり、さらに併せ持つ人になると、最大31倍にもなるケースが出てきたといわれています。
生活習慣の変化によって動脈硬化が引き起こす狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった病気は、治療法の進歩ならびに医師を中心とした医療チームの技術レベル向上などにより、救命可能なケースが増えてきました。
ですが、死亡率は低下したものの、病気そのものが減っているわけではなく、予備軍も含めるとむしろ、ますます増えています。病気の治療には必ず限界というものが存在します。そこで必要なのは「病気になってからの治療」から一歩進んで、「病気そのものを予防する」ことです。
つまり、メタボリック・シンドロームという病名は、こうした合併症を起こしやすい、いわゆる動脈硬化症になりやすい人の早期発見を目的につけられたといってもいいでしょう。つまり、早期発見で病気の芽を摘んでしまうということです。
血圧や脂質及び糖代謝異常などの個々の影響は小さくとも、複数の因子が重なることで重大な合併症である脳梗塞や心筋梗塞といった血管障害の危険度は何倍にも上昇します。
このように、メタボリック・シンドロームは動脈硬化と密接に関連しているのですが、もし病気(合併症)そのものにかかる人を減らすことができれば、国民個人の経済的負担の減少はもちろんのこと、例えば、国民医療費の軽減にもなり、あるいは、多少なりとも医師不足解消にもつながる可能性など、様々な面から社会的にも有益な影響が考えられます。
メタボリック・シンドロームは予防医学のシンボリックな役割も担っているのです(こうした予防医学の重要性は、禁煙外来が保険適応となったことからもわかると思います。)。
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