東北大大学院医学系研究科の山田哲也准教授らの研究によると、太りやすい種類のマウスでグルコキナーゼの上昇を人為的に抑えると、カロリー消費量が上がり、太りにくいマウスで過剰に上昇させるとカロリー消費量が低下したと報告されています。
研究では、糖分や脂肪の多い餌をマウスに与え、肝臓でのグルコキナーゼが増えると、褐色脂肪細胞のカロリー消費が下がり、肝臓から脳につながる神経を切断して高カロリー食を与えたところ、褐色脂肪の活動に変化は起きませんでした。
このことから、肝臓でのグルコキナーゼの増加が脳に伝わると交感神経の働きを抑制する作用が働き、褐色脂肪細胞のカロリー消費を下げることで肥満になると結論付けています。
褐色脂肪細胞は、首、腋の下、肩甲骨周囲、心臓・腎臓周囲で、体内あるいは、摂取したカロリーを熱として放出させる働きのある細胞です。
一般的に、褐色脂肪細胞の働きが活発な人と、そうでない人とでは、1日の基礎代謝量の差は200Kcalあると言われています。
ちなみに、褐色脂肪細胞は、成長期に入ると少しずつ減り、生まれたばかりの時に約100gあったものが、成人になると40g程度に減ってしまいます。これにより歳を重ねるとともに身体に脂肪がつきやすくなるとされています。
したがって、従来から、褐色脂肪細胞を活性化させることで肥満の予防・解消ができ、メタボリックシンドローム対策となるとする説がありましたが、そこにグルコキナーゼが関与していることが報告されたわけです。
ところで、グルコキナーゼとは、解糖系の最初のステップであるグルコースのグルコース6- リン酸への変換を触媒する酵素であり、全身のグルコース恒常性を保つうえで重要な役割を果たしている酵素です。
そのため、グルコキナーゼを活性化させることが糖尿病に対する新たな治療戦略として考えられグルコキナーゼ活性化薬が開発されています。
つまり、グルコキナーゼを活性化することは、糖尿病対策に効果があると考えられていますが、今回の研究では、過剰なグルコキナーゼは、肥満を引き起こすと考えられているわけです。